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見逃すな! 財政破綻の兆しは必ずある

公開日:2020/03/26

そもそも管理組合の財政とは

マンション管理組合の財政は、実に複雑だ。

管理組合は、区分所有者から管理費・積立金を集めて共用部分の運営を行っている。この二つの資金は別々にして帳簿管理をしなければならない。管理組合が経理するにあたって、別々の銀行口座(以下、「口座」という)を用意せよと定められてはいないが、出納の口座も分けて管理した方がよりスマートといえるだろう。となると、管理組合で作る口座は以下の3つ(ないし4つ)になる。

  1. 管理費の収納口座/積立金の収納口座
  2. 電気・水道・電話、保守料、清掃費など、日々の費用を支払うための管理費口座
  3. 長期修繕計画で予定されている修繕工事などの費用を支払うための積立金口座

一般的には、集めた資金をいったん収納口座に入れ、管理費口座・積立金口座のそれぞれに資金を移動することになる。

管理費と積立金とではそれぞれ用途が異なるため、一つの口座で管理するよりは、別々の口座にしておく方が明確になる。国土交通省も、口座を分けた方が会計処理が明確になるので望ましいと言っている。確実に資金を分けておくと、どの口座から支払う費用なのかが分かりやすくなるからだ。この「分かりやすくしておくこと」も、後々重要なポイントになってくる。

“赤字”と“資金不足”は異なる

管理費口座で足りない分を、積立金口座から借りてきて支払うパターンをよく見かけることがある。ここで、収支報告書と貸借対照表のつながりを理解しておくべきだろう。収支報告書と貸借対照表は月次で締めている。区分所有者が納入すべき管理費・積立金は、収支報告書には、実際に納入されていなくても「入ってくるべきもの」として計上しておくという仕組み。支払いにおいても同じで、収支報告書では、実際に支払っていなくても次月以降に支払う予定のものも数字として上げることになる。いわゆる、発生主義で経理されるのだ。

また収支報告書は、そういった「入ってくるべきもの」と「出ていくべきもの」を月間で捉えていくもの。家計簿での現金の動きとは別物なので、そこが経理を経験していない方にはなかなか理解が難しいところだろう。つまり収支報告書の中では、収入から支出を差し引いた結果マイナスになることもある。収入に対して支出が多い、いわゆる赤字状態ということだ。赤字でも大丈夫なのか? これが一時的なもので収入見込みが立っているものであればとりあえずは大丈夫といえるのだが、赤字であることは短期間であれ資金自体が不足する、いわゆる資金繰りがショートするという状態だ。

具体例を挙げてみよう。例えば台風などの被害で修繕を行った場合、先に修繕費用が支払われるが、その分の収入は読み込んでいないので、大きな費用の場合はマイナスになる可能性がある。そして保険金申請をしても入金に時間を要する場合があるため、穴埋めする収入がなければ、赤字になってしまう。カツカツの収支状態であれば、元手が足りないので資金不足にも陥る。もし家庭生活で考えてみると、もらった給料より多くの出費をしてしまった状態ということになる。資金繰りのために借金をしないと生活できないのである。管理組合も同じで赤字は非常事態なのだ。

一方、黒字でも資金不足を招くケースもある。入るべき管理費・積立金が入ってこないケースだ。いわゆる「未収金」などが発生している場合である。「未収金」は貸借対照表で管理されることになるが、長引けば長引くほど、組合財政に影響をもたらす。世の中の企業でもありうる「黒字倒産」そのものなのだ。

財政計画の失敗事例

管理費が赤字のマンションで、積立金から経費を借りてやり繰りしている事例があった。

そのマンションは20年以上経年しており、修繕積立金は帳簿上では「ある」ことになっているのだが、管理費会計の不足分に現金が回ってしまい計画修繕工事を支払う資金がなかった。結果、借り入れをして工事費用を支払うことになってしまった。管理費会計に回していなければ、借入しなくてもよかったはずなのだが、なぜこんな状態が起きてしまったのだろうか。

まずチェックポイントとなるのは、管理費・積立金を共有している口座。一緒くたになっているため残高の管理が明確ではなく、気づかないうちに積立金を管理費会計で使ってしまっていたことが発覚した。せっかく計画的に貯めてきた資金を日々の費用に使ってしまい、流用している状態をやり過ごしてしまっていたのだ。

借入金は、利息も払わなければならない。毎月の積立金の収入から元本と利息を返済することになり、これから必要になる修繕費用の積立にも不安が残る。これは収支報告書や貸借対照表では分別管理を行ってはいたが、資金そのものの管理に見落としがあったケースだ。資金繰りが火の車だったということになる。

ではどうやったら健全に財政を運用できるのか。管理組合は「最小費用で最大効果を出す」ために、予算準拠の運用を徹底する必要がある。支出の見直しは結構大変だ。管理費会計では、収入と支出のバランスを適切に見極めて、無理をせず、無駄を出さないことが大切になる。また、突発的な事象にも対応できるよう、ある程度の余裕も必要だ。単年度の収支差、いわゆる当期剰余金が一か月程度の余剰となる程度が理想だろう。過去からの繰越金も合算し、大きな金額になるようだったら積立金に振替え、将来の工事費用を貯めておくのも堅実な考え方だ。まずは管理費会計を適切な財政状態にし、口座も別に管理していくことが大切なのである。

マンション財政の未来を考える

建物・区分所有者の高齢化問題もある。建物が老朽化すると改修費用が増加していく傾向がある。管理費や積立金を負担する区分所有者も歳を重ね、建物と同じように高齢化していく中で、年金生活者が一時金を負担するのは辛いし難しい。であれば、そうなる前に確実に積み立てておく必要がある。先ほど例に挙げたマンションのように、修繕費用を借入金で支払い、かつ管理費会計が赤字で借入金の返済がある場合、積立金会計から日々の管理のための資金を捻出することもできなくなる。抜本的な財政見直しが必要になるのは自明なことだ。

マンション管理業協会等が、マンションの格付けを行う制度を国交省に働きかけた。「マンション評価制度」というものだ。目的は中古マンション売買の活性化ということだが、管理組合の体制、収支、建築・設備、耐震診断、生活関連など、さまざまな角度からマンションを評価するものになるという。自分のマンションを売る場合にこの評価指標から判断される可能性が出てくるのだから、管理組合の財政面でも赤字や資金不足は他人ごとではない。いかに赤字を解消するか、適正支出を明確にし、その支出に見合った収入になっているのか、不足分をどのように捻出するか、これからでも最小費用で最大効果を出すための施策をしっかりとっていかなければならないのだ。

そのためには、

  1. 収益性:赤字にならないための収支管理(駐車場の稼働率など賃料収入も含む)
  2. 安全性:支払い能力の管理、資金運用
  3. 成長性:長期修繕計画に対する資金繰り

などを指標化し、現状の管理組合財政を知るための診断書のようなものが必要になるだろう。

単なる家計簿の延長のように管理組合のお金を考えるのではなく、マンション財政の未来をしっかり見据えることが大切な時代になってくるということなのだ。

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